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東京高等裁判所 昭和41年(ネ)2657号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕二 控訴人は、控訴人の製品が、その形態自体及び特定部材の組合せによる構成の点において、不正競争防止法第一条第一項第一号にいう「他人ノ商品タルコトヲ示ス表示」に該当すると主張するので、まず、この点について検討する。

不正競争防止法第一条第一項第一号にいう「其ノ他他人ノ商品タルコトヲ示ス表示」とは、同号中その直前に列挙された「他人ノ氏名、商号、商標、商品ノ容器包装」と対照して、これらのものと同様に、商品の出所表示の機能を営むものでなければならないことが明らかである。そして、一般には、商品の形態自体が当該商品の出所表示の機能を営むことはないであろうが、商品の形状(構成部材の組合せも当然これに含まれる)が、当該商品としては極めて特徴的であつて、一見して直ちに、それが特定の営業主の商品であることを看取することができる程度の標識力を備えたものであるときは、当該商品の形状それ自体が、右にいわゆる「他人ノ商品タルコトヲ示ス表示」に該る、と解するのが相当である。

ところで、<書証および人証>に本件弁論の全趣旨を総合して考えると、次の事実を認めることができる。

和風家屋の押入を利用して、これにたんすをはめ込み式にして取付けるという着想は、かなり古くからあり、当初は大工職、建具職が個々の注文に応じて、そのつど製作して取付けてきた。控訴人代表者Tは、その個人営業時代の昭和三八年ごろ、和風家屋の押入はほぼ一定の規格を備えていることに着目して、右のとおり押入に取付けるべき洋服だんすの部品を予め製作し、これをセットとして商品化することを発案し、原判決添付別紙第一目録記載のような製品を試作して、昭和三九年一月ごろから製造販売を開始し、控訴人会社がこれを承継して現在に至つている。一方、被控訴人組合においては、昭和三八年ごろから、家具の量産化が計画され、その一環として押入はめ込みたんすが取り上げられ、昭和三九年初頃から試作にかかり、同年秋頃から原判決添付別紙第二目録記載のような製品を量産して販売をはじめ、秋田県内、東北地方及び東京都内に出荷するようになつた。被控訴人は、当初、控訴人が組立式押入たんすセットを製造販売していることを知らずにいて、昭和四〇年一〇月、控訴人代理人からの製造販売禁止の催告を受けて、はじめてこれを知るにいたつた。右控訴人の製品も被控訴人の製品も、和風家屋の押入の規格が定まつており、また洋服だんすを組立式とするため構成部材に分解してみても、技術的に格別の差異を生ずる余地のないものであることから、細部の点において多少の相違はあつても、その形状ないし構成部材の大綱においては、ほぼ同様な類似のものであり、自他を区別すべき特徴的な点は見当らない。以上のとおり認められ、他に右認定を左右すべき証拠はない。

右認定のように、被控訴人の製品は、控訴人の製品と相前後して、これとは無関係に考案され製造されたものであるにかかわらず、右両者が形状ないし構成部材の大綱においてほぼ相類似していることに徴すれば、控訴人の製品は、組立式押入たんすセットとして、普遍的な形状ないし構成部材を具備しているにすぎず、前記のような、不正競争防止法第一条第一項第一号にいわゆる「他人ノ商品タルコトヲ示ス表示」に該当すると解すべき特徴的形状を具備するものではない、と認めるのが相当である。他にこの認定を動かし、控訴人の製品になお右の「他ノ商品タルコトヲ示ス表示」に該当すべき特徴的形状があり、同法条によつて保護に値すべきものがあることを認めさせるに十分な証拠はない。控訴人の製品につき、組立式押入たんすセットとしての技術的思想の創作性を保護することは、また、別の分野の問題である。

三 右のとおりである以上、控訴人の製品について、不正競争防止法第一条第一項第一号にいう「他人ノ商品タルコトヲ示ス表示」に該当するものであることを前提とする控訴人の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由なしとして棄却すべきものであり、これと同趣旨に出た原判決は、結局相当というべく、本件控訴は理由がない。よつて、これを棄却する。

(服部高顕 石沢健 奈良次郎)

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